古い建物の廊下には共同洗濯場が設置されているものが 多く、これが長屋的な構造を持つこの島の住宅(『コンク
リートの森』で詳細解説)で、人の繋がりを最も「長屋的」
にしていた最大の要因でもありました。共同洗濯場は井戸
端会議の場として、島民のコミュニケーションを深める恰
好の場所でした。
昭和30年代の家電時代の到来と共に、昭和32年(1
)されると、各戸に洗濯機が置かれるようになり、次第に
共同洗濯場は使われなくなりますが、浴場などは閉山まで
共同使用がメインでしたので、家族的なコミュニケーショ
ンが途絶えることはありませんでした。
島内にはかなり大量の洗濯機が残されていますが、その
殆どは一層式のもので、側面にゴム製の回転はさみ口があ
り、全面のノブを回して脱水するタイプのものです。家電
製品の普及が早かった端島で、閉山時の昭和49年に一層
式の洗濯機しかなかっとは考えがたく、恐らく新しい洗濯
機は離島の際に持ち出した事と、閉山後の略奪によって島
内には古くなった洗濯機が残ることになったと考える方が
妥当だと思います。
SANYO
SW-36
発売年:昭和32年(1958)頃
発売価格:22,900円
National
電気洗濯機「ホームライン」
発売年:昭和39年(1964)
発売価格:22,700円
National
電気洗濯機「ハイライン」
発売年:昭和38年(1963)
発売価格:23,300円
National
電気洗濯機 キュービックタイプ
発売年:昭和33年(1958)
発売価格:27,300円
島内最大の建物(65号棟)に残る、共
同洗濯場跡。かなり広いスペースの両側
に流しが設置され、周囲には洗濯桶や洗
濯板(画像下左)が残存しています。
また同じスペースに洗濯機もおかれ、手
洗いから自動洗濯機へ変遷していった過
程をつぶさにみることができます。
特にこの共同洗濯場は、しきりが板張
りになっていて、建物の外観からは想像
もできない長屋の露地的な空間が造り出
されています。
因みに画像右端に写る2機の洗濯機の
インです。かなり人気があった商品みた いです。
このコーナーには練炭火鉢や竹箒なども置かれていました
共同洗濯場に残る洗濯板
上と同じ65号棟1階の共同炊事場