島内には色々な娯楽施設がありました。もちろん限られたスペースなので、本格的な娯楽施設を建設する余裕はありませんが、それでも ちょっとした息抜きには十分のものだったと思います。本格的に遊びたい場合は、休みの日を使って長崎市へ繰り出したそうです。また大 正14年(1925)の台風の被害にあった南部地域の写真には、3階建ての遊郭が写っています。当時南部には男性用の炭住長屋が並ん でいたので、そのお客で賑わったそうですが、その後移転し日給社宅の1階に店を構えていた時代もありました。
■ 映画館 ■
島内で一番人気のあった娯楽は映画でした。まだドルフィン桟橋 (『海の道』で詳細解説)が完成する前の、海が時化ると人が上陸
できなくなる時代でも、映画フィルムだけは荷揚げされたようです。
昭和館と呼ばれ、昭和2年(1927)に建築された煉瓦とRC
の建築物ですが、当時の写真を見ると、他の住宅棟の造りとは明ら
かに違い、娯楽施設だったことがよくわかります。弁士台やオーケ
ストラピットまである本格的な映画館でしたが、テレビの普及と共
に徐々に一線を退き、やがて卓球場、閉山時には倉庫として使われ
ていた不遇の映画館でした。
残念ながらこの映画館は閉山後の平成3年(1991)の大型台
風により全壊し、エントランスのタイル張りの部分だけが残ってい
ます。
50号棟
■ パチンコホール ■
端島には昭和46年(1971)開業のパチンコホールがありま
した。画像は何故か住宅棟の建物の踊り場におかれていたパチンコ
台ですが、この場所は島内でも北西よりの建物で、元来パチンコホ
ールがあった建物とは随分離れています。恐らく閉山後の来島者が
移動したものとおもわれますが、実際のパチンコホールに残存する
台も同じ造りのものです。
今でこそスターウォーズや銀河鉄道999のキャラクターが登場
するような台が主流ですが、右下の手動式ハンマーや釘の多さが当
時のパチンコを偲ばせます。
因みに対岸の野母半島にある<軍艦島資料館>には、パチンコホ
ールで使用されていたドル箱が常設展示されています。
48号棟
■ その他の娯楽施設 ■
これら以外にも撞球場(ビリヤード場・17号棟1階)、碁会所
(16号棟1階)、麻雀店(48号棟地階)、等がありました。
ビリヤード場には、破損は激しいものの、台や点数盤など往時を
を偲ぶものがまだ沢山残存しています。(画像)
テニスコート
しかしこれら施設による娯楽より、島内で一番のレクリエーションは堤防からの釣りだったようです。実際長崎に幾度か足を運んで最も 印象に残っているものの一つがその魚の種類の豊富さです。夕陽を眺めながらの堤防からの釣りは、さぞ気持ちよかったことと思います。